Kailh Choc V1 スイッチを静音化する
静音スイッチが登場した
ロープロファイル待望の静音タイプが 2024年4月に日本でも発売されました。 Kailh Choc V1 系の Ambients Silent Choc Switches です。
そのため静音対策に関する記載はすべて古くなりました。
小手先の対策ではなく、しっかりとした静音機構のある方が静音性は高く、どうしても防げなかったリセット時の音もしっかり抑えられています。これはすごいです。
1 個あたり 154 円と割高です。 また、カサカサした音は残りますが、低さと静音性に妥協できない方は唯一の選択肢となるでしょう。
以下古い情報です。
Choc スイッチでも静音化できるはず
私はパームレストを好まず、これが不要な Kailh Choc スイッチ (以降 Choc スイッチ)をメインとしています。
Choc スイッチはが、標準的な Cherry MX 互換品スイッチと比較するとどうしてもチープさを感じます。
背の低さと使用感が完全にトレードオフです。
しかし、そんな中でも Logicool 社のロープロファイルメカニカルキーボードを触ってみると思ったよりも感触が良く、 Choc スイッチにも改善の余地があるのだと希望を見出して頑張ってきました。
執筆時点で Choc スイッチには静音タイプの展開がなく、音の改善については「自分でがんばるしかない」状況です。
私は「絶対音を出したくない派」のため、Choc スイッチの静音化にいていくつか検証をしました。
この記事では、 Choc スイッチの静音化について、私が「これなら良い」と感じたことをまとめます。
対策 1 : O リング
もっとも手軽な静音化が「 O リングの装着」だと思います。
Choc スイッチにも O リングの効果はあります。
Choc スイッチと MBK キーキャップの組み合わせで音をチェックしたところ、明らかに押下時のカチャ音が低減しました。
把握している限り、 Choc スイッチ専用の O リングはありません。
Cherry MX 互換品がそのまま使用できます。
取付時は、リングを多少引っ張って装着します。

なお、O リングは厚み 1.5 mm が標準だと思います。
Choc スイッチと MBK キーキャップにこのサイズの O リングを装着すると、浮きが出てキャップのハマりが甘くなります。

そのため、O リングのような衝撃を吸収する素材で、かつより薄いものを挟めることがベターだと考えています。
O リング 代替 1 : シリコンワッシャー
代替品としては、SNS で「厚み 0.5mm 程度のシリコンワッシャー」を教えてもらいました。
廣杉計器さんで取り扱っている “シリコンゴム 平ワッシャー (SIW-0305-05)” です。
キャップにシリコンワッシャーをはめると、たしかに浮きは押さえられます。 しかし薄い分、静音効果も減ったように感じました。
O リング 代替 2 : スポンジシート
O リングとシリコンワッシャーの中間程度の高さのもので、着目したのがウレタン系のシートです。
私は、ホームセンターで糊付きのスポンジシートを買ってきて、スイッチ裏に貼り付けています。
選んだものは “CR スポンジ” の 1mm 厚です。
ゴムシートだと固く衝撃を吸収するというより跳ね返すイメージです。 その点、CR スポンジは適当な柔らかさがあり、かつ 1 mm という薄さが魅力です。
MBK キャップを裏返して、画像 3 のように川の字に CR スポンジを貼り付けけるといい感じになりました。
中央のみ、 1 本でも効果がありますが、3 本に増やし、接地面を増やすことでより効果が感じられました。

今のところはこれで満足しています。
最初スポンジのヘタリが気になりましたが、6 ヶ月運用しても、静音効果が減少したようには感じません。
CR スポンジは柔らかさがありますが、より弾性力のあるポロンスポンジでも良さそうに思います。
ポロンスポンジは、厚み 1.5mm のようで、この厚みなら O リングと変わらないかもしれず、未検証です。
対策 2 : ハウジング内部のスタビライザー
Choc には、スイッチ内部にスタビライザーのあるタイプがあります。
初期からあるリニア Red 、タクタイル Brown などがスタビライザーのあるタイプです。

スタビライザーはスイッチの動きを安定させブレを軽減するためのものなのです、 Choc スイッチに関しては「なくても変わらない」と評価する人が多いようです。
そのため、スイッチを分解して取り外すことでカチャ音を軽減できます。
対策 3 : ルブ(潤滑)
Choc スイッチでも内部のルブは有効です。
ルブは、サラサラとした GPL 105 はスプリングの潤滑向き、
(粘着性があるとバネが戻らなくなる)
で、バネ以外は GPL 205 G0
というのがスタンダードだと思います。
Cherry MX 互換品スイッチはルブでかなり感触が良くなります。 Choc については、正直、ルブを施しても劇的に改善するわけではなく、過度な期待はできません。
メカニカルスイッチは、押下時と押し戻し時に衝撃が発生し、音が発生します。
Choc スイッチに関しては、ルブで押下音は緩和しますが、押し戻し音にはそれほど効果がありません。
押下音に対しては、ボトムハウジングとスプリングのルブが有効です。
ボトムについて、0.5mm のシリコンシートを 5x5mm にカットしてスプリングの左右に敷くことで、底打ち音がさらに緩和されます。
ただし、明らかにスイッチの押下感は変わり、グニュグニュします。
私は底打ちが強い方で、感触は変になりますが、シリコンを敷いたほうが好みです。
シリコンシートの代わりにシリコンワッシャーを挟む方法もありますが、こちらも接地面積から言うと、シートをカットして敷き詰めたほうが静音には効果があると感じます。
また、押し戻し音に対しては、ステムの左右にある羽?と、トップハウジングの羽が当たる箇所にルブをすれば良いす。
押し戻し音に対するルブについて、効果はありますが、限定的であると感じます。
もはやこれまでか、と感じていたところに知ったのが、テープ MOD です。
対策 4 : テープ MOD
Choc スイッチに対するテープ MOD とは、トップハウジングへ、細切りにしたテープを巻くことのようです。
これは、ルブするよりも押し戻し音に効果がありました。
YouTube に動画があります。
Modding Kailh Choc Switches - O-Rings, Tape Modding, and Lubing Guide
https://www.youtube.com/watch?v=3YBNRXRXG0w
こちらの海外の動画ではメンディングテープを使用しているようにみえます。
メンディングテープを挟むと、ルブするより静かになりました。
すごいです。
その後、手持ちのいろいろな素材で静音性を評価したところ、私はマスキングテープの効果が高いと感じました。

※ ステムの左右羽にもマスキングテープを貼ってみましたが、苦労する割には効果を感じられませんでした。
マスキングテープは、メンディングテープよりも厚みがあります。
そのため、スイッチの組み立て時、ステムのはまりにくいことありました。
これは、テープの左右に出した耳部分を外側に引っ張りながらステムを通すとスムーズでした。
なお、使用したマスキングテープはタミヤの品です。
2 mm 幅のマスキングテープは、 Choc スイッチの MOD にちょうどよい太さです。
未検証ですが、 3 mm 幅ですと隙間もへって貼りやすいと思います。
追記
しばらくこの黄色のいかにも、なカラーのものを使っていましたが、あるときダイソーで「ホワイトボード用ラインテープ」を発見し、使用してみたところ、マスキングテープと同等の効果があると感じました。
Choc スイッチを上下ともに黒く染めているため、MOD のテープも黒で色差がなくなりいい感じになりました。
Choc スイッチの分解
Choc スイッチは Cherry MX 互換スイッチと大きく構造が異なっています。
Cherry MX 互換スイッチ用のスイッチオープナーは使用できません。

スイッチのトップハウジングには 4 つの足が生えていて、足とボトムハウジングの隙間に、細長いものを挟むと取り外すことができます。
私はピンセットの先か、精密ドライバーを使うことが多いです。
ただし、Choc V1 スイッチは、トップハウジングの足が若干弱いです。
分解時にこの足が割れてししまったり、分解によってかみ合わせに影響し、緩むことがあります。
緩んでしまったスイッチは、キャップ取り外し時にスイッチがパカッと開いてしまいます。
なお、 Choc スイッチ専用のスイッチオープナーが、過去 DMM.make
のクリエーターズマーケットに出品されていました。

大量に分解する場合はこれを利用しています。
現在は陳列されていないようで、残念です。
私が使用しているものとは異なりますが、Choc V1 用のスイッチオープナーの公開 3D データがありました。※未検証。
アイコン的に、HELIX を設計した方の作品でしょうか?
Choc スイッチの静音化、総括
- O リングを装着する
- 押下音にはボトムハウジングとスプリングをルブする
シリコンを埋める方法もある - 押し戻し音にはテープ or マステ MOD を施す
大変な手間はかかりますが、これでかなり静かになります。
これ以上は、ケースの領域ですね。